第406章

前田南は微笑みを浮かべながらみかん園へと足を踏み入れた。木漏れ日が彼女の顔に落ち、光と影の斑模様を描き出している。

望月琛はククを抱きかかえたまま振り返った。眼鏡の奥にある瞳は、穏やかな笑みを湛えていた。

「ママ、見て!」

ククが黄金色に輝く蜜柑を高々と掲げる。

「これが一番大きいから、きっと一番甘いよ」

前田南は手を伸ばしてそれを受け取る。その拍子に、指先が不意に望月琛の手の甲に触れた。

掌の温もり。そして薄く張ったタコの感触に、心臓がトクンと跳ねる。

「食べてごらん」

望月琛が静かに促す。その視線は、蜜柑の皮を剥く彼女の手元にじっと注がれていた。

舌の上で弾ける果実の清...

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